宮本恒靖公式サイト

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 The FIFA Master が始まったのが昨年の9月のこと。

 最初のモジュールが行われたイギリス、レスターのDe Montfort Universityではスポーツの歴史や成り立ちを学びました。具体的には、近代スポーツの大英帝国の繁栄に伴う拡大や、近代オリンピックやFIFAワールドカップの発展、イギリスサッカーにおけるプレミアリーグへの移行などといった内容です。

 今年1月からミラノのBocconi Universityで始まった2つ目のモジュールでは主にマネジメントに関する授業を受けました。例えば、スポーツの組織のBalance Sheet(貸借対照表)やIncome Statement(損益計算書)を分析し、それらの組織がどのような経営状態にあるのかを調べたり、どうすれば組織を成功に導くことができるのかを論じたり、マーケティングのノウハウを学んだり、市場に入っていくための戦略の大切さを教わったり、と刺激的な授業が多かったです。このモジュールの最後には実際にスポーツイベントを立ち上げることを想定したプレゼンもやりました。

 最後のモジュールではスイスにあるNeuchatel Universityで、スポーツに関する法律や倫理、ドーピング問題などを学びました。慣習法と大陸法の違いといった(英米は慣習法なのに対し、ドイツ、フランス、日本などは大陸法です)基本的なことや、選手の契約、放映権、知的財産権といった具体的な分野も教わり、またスポーツで紛争が起こった時にどのように問題を解決するかといったことも実際に模擬裁判を行いながら勉強しました。さらに、現代のスポーツの大きな問題である倫理についても重点的に授業が行われました。このニューシャテルでの授業が一番大変なものでした。法律のバックグラウンドを持たない人たちにとって、そのコンセプトや法律用語を理解することは簡単なことではありません。実際に論述式のテストでは選択問題、10行ほどで答える問題、そして小論文を3時間かけてこなすというヘビーなものでした・・・。結局3回の論述式、模擬裁判、口頭の5つの試験を終えて、授業全部が終わったのが6月20日。そこから一ヶ月はグループ研究を仕上げる時間になりました。

 ファイナルプロジェクトと呼ばれるこの研究はマスターの集大成とされています。入学と同時に各5人ずつの6グループに分けられ、10月くらいからどんな研究テーマにするのかを少しずつ話し合ってきました。12月に「ボスニア・ヘルツェゴヴィナにおいて、青少年のためのスポーツアカデミーは民族の対立を解消につながるか」(1992年から95年にかけてボスニア紛争により、民族間に深い溝が生まれた)というものになりました。スポーツは青少年を教育する力を持つという信念や、ボスニア出身がグループにいたこと、マーケティングを得意とする人や弁護士がいたこと、(実際のアカデミーの設立には法律やマーケティングの知識が必要とされます)などの理由が背景にありました。この研究結果をレポートにまとめ、その発表としてプレゼンテーションを行いました。200人を超える有識者や卒業生、家族の前でのプレゼンはかなりの緊張感がありましたが、何とか乗り切ることができました。共同で作業をする中、衝突もありましたが、最後の発表を終えた時は一緒に仕事をやり遂げた連帯感が生まれました。

 そして、7月19日、ついにFIFA Masterの修了証書を受け取りました。この時撮った写真は我ながら本当にホッとした表情をしているように思います。FIFA Masterで過ごした10か月は17年間の選手生活と同じくらいの価値がありました。特に、歴史的、経営的、法的な観点からバランスよく物事を分析することで最良の判断を下すことができる、とする考えはこれから大いに役立つと思います。そして何より、このコースで一緒に学び、笑い、苦労し、時にはぶつかりもした仲間とのつながりは素晴らしい財産となりました。

 これからのことはまだ具体的には決めていません。イメージしていることもありますが、なかなかすぐに実行に移せるものでもないですし。いろんな人に会い、考えて、決めていきます。少し時間はかかるかもしれません。今月からWOWOWでリーガ・エスパニョーラの解説をすることになったので、日本と欧州のサッカーの現場を見ながら考えていければいいかなと思っています。

Tsune

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